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#1 保護者である聖職者について
Baroque
初めて会った時の印象はまさに聖職者だった。
纏う空気、持ち合わせた魂、発声の仕方など、昔よく対峙した者たちと同じだ。
初めこそあからさまなくらい警戒していたが、今はほとんど警戒していないようだ。
こちらの器が変わったことで、立場が向こうのほうが上になったことが最大の要因だろう。
一緒にいるこで気がついたのは、初対面の時と違い言葉使いが丁寧になったこと。
あれはどうやら教育の一環であるようだ。
気性は穏やかでよく笑うが、実際のところ心からの笑みではない。
時に冷徹だと思えるほど冷たく嗤うが、多くは『神の家』に対してのものだ。
旅をしている理由は今のところ知らない。
『神の家』から逃げている様子だが、その割りにあまり必死ではない。
聖職者としての奉仕活動などは物々交換と同じと考えているふしがある。
記憶力がものすごく良いらしく、方式陣や図などを明確に覚えているようだ。
私の髪を触るが好きらしく、よく撫でている。
その時の笑顔は真実の笑みで、時々昔を思い出す。
できれば思い出したくない記憶なのだが、どうしてか止めろとは言えない。
「アリシア」
「はい。止めますね。そんな迷惑そうな顔しなくてもいいではありませんか」
「楽しいか?」
「楽しいというよりは、手触りが気持ちいいんです。………そんな呆れたような顔しなくてもいいではないですか」
「私は犬猫ではない」
「はい。わかりました。止めますよ」
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#2 花嫁候補である姫君について
Cloud
初めて見た時は声も出なかった。
本当にいるんだと思って、とにかく近付いてみたかった。
近付いてみたら、今度は触りたくなった。
説得するのに結構逃げられたのは、まあ、仕方ないかな。
性格はあの時からあまり変わってないんじゃないかな。
真直ぐに他人の感情を受け止める人で、それで傷つかなくてもいいことで傷つくことが多い。
それと、自分は必要の無い人間だと思ってる。あれは根強い。きっと何度「必要だ」って言ってもダメだと思う。
自分に必要だと思った人に対してはものすごく信頼する。
カタリナはわかるけど、アドルなんかも信頼してるのはちょっと心配。いや、悪くはないけど。
あとは、恥ずかしがり屋……というよりは免疫がないんだろうな。
攻めるこっちとしては非常に可愛いけど、誰に対してもああなのだろうか。
知りたいことは山ほどあるのに、中々近づけないのが苛立たしい。
彼女を知りたいのと同時に、知ってもらいたいことも沢山ある。
でも、絶対に知られたくないこともあって矛盾しているなと嘲笑が洩れる。
「クラウド様。お願いがあるのですが」
「なんだ?」
「機嫌を直して頂けませんかな。このままでは皆が息を止めてしまいます」
「私は特に何もしていないが?」
「ええ。一言も発せず、表情も変えず、ただ書類を睨んでいるだけです」
「それで?」
「できれば、私どもの話に耳を傾けて、気を紛らわせて頂けますかな?」
「…わかった。続けろ」
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#3 腕の中に納まる恋人について
Kizaki
初めて見た時にすでに無自覚に恋をしてたんだと思う。
本当にどこにでもいるOLさんって感じで、取り立てて印象に残るような人じゃなかった。あの瞬間までは。
性格は、そうだね。お人好しかな?
最初にした電話もそうだけど、本当に迷惑なら出なければいいし、拒否してしまえばいいのに。
まあ、それができないからこそ今があるわけで、その性格に感謝はしてる。
でもその性格って、結構危ないと思うんだよね。ああ、でもガードは固いから大丈夫かな。
電話で話すようになってからも、かなりの時間待たされたからね。警戒心はあるんだと思う。
いや、警戒というよりは、必要以上に人に関わらないようにしてるところがある。
あまり欲求を口にしないし、自分の事は話さないし。
過去に何か辛い事があったんだろうなっていうのはなんとなく知ってる。
彼女の過去をよく知る香苗さんが少しだけ話してくれたから。
その過去をまだ話してくれてないところを見ると、僕はまだ警戒されてるんだと思う。
時々すごく寂しそうに黙り込む時があって、それを見ると抱きしめたくなる。
「あの、木崎さん」
「はい」
「いきなりなんですか?」
「ん? 嫌?」
「そうじゃないですけど。あの…」
「迷惑?」
「………」
「? 雪乃?」
「………もう少しだけ」
「ん」
「考察」 (2008/07-2008/09)